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5話 彼女の無防備な誘いと、彼の葛藤

작가: みみっく
last update 최신 업데이트: 2025-08-27 02:22:33

 「え!? あ、ち、ちがう!! その、座れる場所でさ、ゆっくり話ができるところだよっ」

 ヒナは顔を真っ赤にさせて、目を泳がせながら懸命に説明をする。その仕草が可愛らしくて、俺は思わず見入ってしまった。街灯の光が、ヒナの赤い頬をぼんやりと照らしている。公園の静かな夜の空気に、ヒナの焦った息遣いが微かに響いた。

「ファミレスとか……だよね。それならもっと寛げてお金のかからない俺の家とか……?」

 そう口にしかけて、自分の言っている大胆な発言に気づき、俺は慌てて言葉を止めた。心臓がドクン、と大きく鳴る。

「……わぁ、それいい! ユウくんのおうちに行きたいっ! 行ってみたーい!」

 な、なに!? ヒナは目を輝かせ、無邪気な笑顔で俺の言葉に食いついてきた。この無警戒というか、無防備な……。こういうのにも慣れているんだろうな。そんな思いが頭をよぎり、俺は思わず、はぁ……とため息をついた。ヒナに無意識で、少し呆れたような視線を送っていたらしい。

 「……なによぅ、その顔はぁ~? むぅー」

 ヒナが頬を可愛らしく膨らませて、不満げに言った。それから、考える仕草をして、自分の発言に気づいたらしい。

 「……ち、違うから! ほいほいと付いていく感じじゃないよっ! いつもは……男子と二人っきりにならないしっ! 男子の家になんかついて行かないから!」

 顔を赤くして、ヒナは必死に弁解する。え!? でも、自然と慣れた感じで……誘いに乗ってきたよな。彼女の明るくて可愛い性格だからこそ、モテるのだろう。言い寄ってくる男も多そうだ。それに……スキンシップというかボディータッチが多くて、距離感も近いから……俺みたいに勘違いしそうなヤツ、多いだろうな……。俺の胸の奥で、ヒナはただの友達で初めてできた仲良くしてくれる女の子だ。なのでどこか微かにヒナを独占したいという気持ちが湧いていたのかもしれない。

 俺が急に暗い顔をして視線を落とした。腕に絡まるヒナの体温が、なぜか遠く感じられた。

「ほらぁ、行くよ! ……って、どっちー?」

 ヒナが俺の腕を引く感じで公園から出たところで、可愛らしく俺を見上げて聞いてきた。その瞳は、期待に満ちてキラキラと輝いている。

「いや、俺……一人暮らし、それにボロアパートで汚いよ」

 俺は適当に答えた。こんな状況で、彼女を自分の部屋に招くことに、一抹の不安を覚えていた。

「えへへ、わたしーそんなの気にしませーん! ユウくんのおへやー♪」

 ヒナは気にする素振りもなく、無邪気に笑った。その屈託のない笑顔が、俺の心に小さな波紋を広げる。

「気にしてよ。何だか慣れてる感じだけど……危ないよ。もう少し警戒感を持った方が良いと思うよ」

 俺は思わず、少し咎めるような口調になってしまった。しかし、ヒナは困ったように眉を下げた。

「さっきも言ったけど……慣れてないよ。男の人と二人っきりって……初めてだしぃ……ドキドキしてるよっ」

 そういえば、彼女の頬は少し赤く染まって、桃色がかって見えた。街灯の光が、その淡い赤みを強調している。その表情は、普段の快活なヒナとは違う、どこか儚げな可愛らしさを感じさせた。

「そうなの? 友達が大勢いてヒナ可愛いしモテるでしょ? 誘われることも多そうだけど?」

 俺は半信半疑でヒナの顔を覗き込んだ。こんなに可愛らしいヒナが、男子と二人きりになるのが初めてだなんて、信じがたい。

「あぁ……まあ、誘われることは多いかも。でも、相手にしないもーん! わたし、大勢の友達とワイワイ騒いでるのが好きなだけだし……誰かと付き合うとか考えてないから」

 ヒナはきっぱりと言い放った。その言葉に嘘偽りはないように感じられた。ま、俺に嘘をつく必要性もないだろうし……バレる嘘はつかないか。そんな風に考える自分がいた。

「って、どこ行くの?」

 ヒナが話というか言い訳を夢中でしていて、俺は腕を引っ張られるままに歩いていた。夜の公園を抜け、見慣れない住宅街へと足を踏み入れている。

「……わ、わかんなーい……どこ向かってるんだろうね。ユウくんのおうちに行きたいんデスケド……?」

 ヒナは困ったように首を傾げた。その表情は、まるで迷子の子どものようだった。しかし、その顔を見ていると、なぜか心が和む。ヒナとなら、気まずい無言の沈黙とかなくて良いかもしれないな。初めての女友達か……。そんな思いが胸をよぎった。

 「こ、こっち……」

 俺は今度は自分から、ヒナの腕をそっと取り、組むような形で案内をした。心臓がトクンと跳ねる。彼女の腕の柔らかい感触が、Tシャツ越しに伝わってくる。向かう先は、大学近くに親の兄弟がマンションのオーナーをしていて、格安で借りている家だ。さっきは断る理由で嘘をつき、アパートだと言ってしまったが、後戻りはできない。

「わっ、うそつきー。どこがアパートなの!? マンション! お金持ちじゃんよぉ……」

 マンションのエントランスを見た途端、ヒナは目を丸くして、俺とマンションを交互に見て言ってきた。その声には、驚きと少しの非難、そして好奇心が混じっているように聞こえた。

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